不動産投資の節税って本当?
不動産投資を行う際のメリットとしてよく、
・安定した収入が見込める
・公的・私的年金を補完する資産形成ができる
・節税効果がある
等、様々なうたわれ方をしていますが、今回は「節税効果がある」という部分についてどういうことなのか書いていきたいと思います。
不動産投資とは、マンションやアパート等の不動産を購入し、
〇それを第三者に貸して家賃収入を得る
〇購入時の価格よりも高い価格で不動産を売却する際の利益
を期待する投資のことです。
所得税・住民税
不動産投資を通した節税は下記の二つがメインとなります。
〇減価償却
不動産投資として購入した不動産を、第三者に貸し付け、賃貸料や共益費に関する収入が発生した場合は「不動産所得」として確定申告を行う必要があります。
※”返還をしない敷金や保証金”、”更新料”等についても「不動産所得」に該当します。
ただし、これらに関しては申告をする際の所得区分に注意が必要です。
区 分 | 所 得 区 分 | ||
従業員宿舎の使用料収入 | 事業所得 | ||
有料駐車場 | 自己の責任で 他人の物を |
保管する | 事業所得・雑所得 |
保管しない | 不動産所得 | ||
下宿アパート | 食事を | 供する | 事業所得・雑所得 |
供さない | 不動産所得 |
不動産所得は、「総収入金額」 ー 「必要経費」により計算をします。
「必要経費」の主な項目はこちらになります。
・固定資産税
・損害保険料
・減価償却費
・修繕費
“減価償却費”は、「必要経費」の中に含まれる一つの項目となります。
”減価償却費”というのは、使用することや時間が経過することで価値が減少する建物や設備等に対する取得費用について、耐用年数、償却率等表を利用して各年に分割した結果のことです。
〈参考〉
構 造 |
耐 用 年 数 |
木造 | 22年 |
木骨モルタル造 | 20年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 47年 |
れんが造・石造・ブロック造 | 38年 |
鉄骨(3mm以下) | 19年 |
鉄骨(3mm超~4mm以下) | 27年 |
鉄骨(4mm超) | 34年 |
例えば、2,500万円の木造戸建てを購入した場合、耐用年数は22年であり、償却率は0.046となります。
減価償却費の金額は、2,500万円 × 0.046 = 115万円 となります。
さらに条件を加え、その木造戸建てを、家賃15万円で1年間、第三者に貸し出すことができたとします。
この時の不動産所得の金額は、15万円 × 12か月 − 減価償却費 115万円 = 65万円となります。
なお、青色申告承認申請書(※)を提出している場合には、さらに10万円を不動産所得より差し引くことが可能です。
(※)不動産の貸し付けを始める際には次の様な届出書や申請書のうち、該当するものの提出が必要となります。
種 類 | 期 限 | そ の 他 |
個人事業の開業・廃業届出書 | 開業の日から1か月以内 | ※事業的規模の不動産貸付を開始する際 →”事業的規模”とは、貸家を5棟以上またはアパート等を10室以上貸し付けているような場合 |
所得税の青色申告承認申請書 | 開業の日から2か月以内 (その年の1/15以前に開業した場合は3/15まで) |
|
青色事業専従者給与に関する届出書 | 青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3/15まで (その年の1月16日以後に開業した人や新たに専従者がいることとなった人は、その開業の日や専従者がいることとなった日から2か月以内) |
※事業的規模で不動産貸付を営んでいる人 |
所得税の減価償却資産の償却方法の届出書 | 開業した年の翌年3/15まで | ※届出をしない場合は法定の償却方法になる |
所得税や住民税は、所得に対して税率を乗じることで、税額が計算されるために、所得が減少すればその分だけ、計算される税金額も少なくなります。
所得税では、所得に比例して税率も高くなる累進税率のため、所得を低くすることで、適用される税率もその分だけ低くなります。
〈所得税の税率〉
〇損益通算
減価償却費の方で紹介した例では、1年間を通して入居者がおり、家賃収入をしっかり受け取れていたケースでした。
途中で退去があり、次の入居者が決まるまでに少し期間が空いた関係で、1年間のうち6か月だけ家賃収入を受け取れたケースではどうでしょうか。
この時の不動産所得の金額は、15万円 × 6か月 − 減価償却費 115万円 = ▲25万円となります。
不動産投資をされている方が、会社員で給与所得、事業を行っていて事業所得等、不動産所得とは別で所得を有している場合、その所得と不動産所得のマイナス分を合わせて計算することが可能です。
先ほどのケースで、不動産投資を行っている人に600万円の給与所得がある場合、「給与所得 600万円 + 不動産所得 ▲25万円 = 575万円」と計算ができるために、所得が減った分だけ計算される税金額が少なくなります。
相続税・贈与税
〇財産評価額が低くなる
土地:路線価方式や倍率方式
建物:固定資産税評価額
それぞれ上記の様な方法で財産の評価がなされ、その評価額に応じて税率や税額が決まってきます。
路線価方式では公示価格の8割、固定資産税評価額では公示価格の7割程度の金額となっております。
つまり、1億円の現金があった場合には、1億円が財産評価額として税率や税額が計算されてしまいますが、1億円を不動産とした場合、財産評価額は1億円よりも小さくなり、それだけ計算される税額も少なくなります。
〇不動産を賃貸に出した場合、更に評価額を下げられる
・賃貸住宅の土地(貸家建付地):自用地評価額 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
・賃貸住宅の建物:固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
”借地権割合”は、土地がある場所によって30%~90%の間で設定をされています。
”借家権割合”は、全国一律で30%となっています。
”賃貸割合”は、建物の床面積のうち、実際に賃貸されている床面積の割合となります。
例えば借地権割合が70%と定められている地域で、賃貸割合が100%とした場合の土地の評価額を計算する際には、
「借地権割合 70% × 借家権割合 30% × 賃貸割合 100% = 21%」
約2割、土地の評価額を下げることが可能です。
〇小規模宅地等の特例利用で評価額を下げる
自宅や事業に使用していた土地を相続した場合に、一定の条件のもと相続税評価額を引き下げることが可能な制度となります。
この制度をフルで利用できる際には、200㎡までの部分の評価額を50%引き下げることが可能です。
こちらの制度については、制度の適用可否や、どこまで評価額を下げられるか、またどうした場合が最適な評価額となるかを計算すること等、非常に複雑となります。
法人化
個人で不動産投資をする場合、投資から得た所得に応じて、所得税・住民税(所得割 10%)を納める必要があります。
所得税については、累進課税制度が採用されているために、所得が高ければ高いほど、税率も高くなります。
ただし、資本金1億円以下で法人を設立し利益が生じた結果、計算される法人税は下記の税率を利用して計算されます。
年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円超の部分 | 23.2% |
単純に所得税率と法人税率を比較した際、年間所得が900万円を超えてきた際には法人化を考える一つの目安として見えるかもしれません。
ただし、法人化を考える際にはこちらの点も考慮し、慎重に考える必要があります。
・法人設立費用がかかる
・赤字であっても法人住民税が毎年7万円程度発生
・法人事業税の発生
・法人のお金を個人のお金として自由に利用できない
・長期保有後の売却益にかかる税金が高くなる
・社会保険料
まとめ
不動産投資については、それぞれ節税として利用できる点はあります。
しかし、節税ばかりに目を向けるのではなく、毎年の収支や、売却額等を重視し、全体として得をしているのかを考えることが非常に重要であると思います。
・不動産投資による帳簿・決算書作成、税務申告(個人・法人)
・不動産を活用した相続対策
・売却時の税務申告
・法人化のタイミング検討
等、当事務所としてご支援できることがあるかと思います。
個別にお見積可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
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